マーティン・スコセッシ監督の『沈黙』のイエズス会士のとった行動について、映画を観てひと月たったいまでも友だちと意見を交わすのが少しも不思議でないのは、ここがローマだからかも知れません。ローマにいると、あの時代が遠い過去のこととは思えない、綿々と息づくものがある。トレヴィの泉の近く、現在の大統領邸のすぐ横にあるイエズス会のために設立されたローマ学院(現在のグレゴリア大学)には、グレゴリウス教皇から布教を託される天正遣欧使節団員の伊東マンショが描かれた絵が展示してあります。グレゴリア大学に行けばだれでも絵を鑑賞することができるという、とてもありがたい環境です。
天正遣欧使節団の四人のメンバーのひとりに中浦ジュリアンというひとがいますが、あの映画のフェレイラとともに穴吊るしの刑に処されて殉教し、その374年後の2007年6月に福者の列に加えられました。一方のフェレイラは、ご存じの通り、棄教です。「わたしはローマを見たものである」という中浦ジュリアン神父の言葉はあまりにも有名。
今日は、その中浦ジュリアン神父の肖像画が、トラステヴェレのオルトの聖マリア教会に飾られているというので行って参りました。
オスティアに到着すると、みるみる天候が悪化、突風が吹き荒れ、もうだめかと思ったそのとき、出航前に立ち寄った教会のマリアさまを思い出し、みんなで必死にお祈りしたのです。すると、風は止み、波は静まり、セーフ。奇跡が起きたのです。このマリアさま、ほかにも奇跡を起こしたそうです・・。
そんなこんなで使節団とはご縁のある教会なのだそう。ちなみに使節団のなかで列福は中浦ジュリアン神父だけ。肖像画は三牧樺ず子画伯によるもので、長崎の大司教からオルトの聖マリア教会へ贈られたそうです。
この後は、教会の近辺を散策。近くにはサンタ・チェチリア教会があります。音楽の聖人であるこのひとの名前にちなんだ音楽院もローマにはあります。見るからにお金持ちの教会といった感じ。
トラステヴェレ地区には美味しいリストランテもたくさんありますが、とにかく歴史がいっぱいつまっていて文化的満腹感を味わえます!カーニバルのいろんなお菓子が並ぶカフェでお茶をしながら、延々と棄教か殉教か、語りあったのでした。