2024年5月17日

ブダペスト『音楽とお菓子の旅』③

 



ブダペスト最終日は母の日とあってどこか美味しいレストランを奮発しようかと思ったけれど、選んだのはグンデル、ここの元祖パンケーキ(クレープ)パラチンタを食してみたかった。



レストランとしても歴史があり、脂っぽくちょっとヘヴィーなハンガリー料理とフランス料理をフュージョンさせたのがこのグンデルなのだとか。

ランチの予約は1か月以上前からすでに満席だったりするので、ほぼほぼ諦めていたのだが、お茶ならいけるかも、とダメモトでオンライン予約してみると当日にも関わらずOKが出た!

3時のおやつはパラチンタ~!

グンデルについてはこちらのブログが詳しい→https://www.hungary-travel-living.org/gundel/

グンデルは地下鉄M1線のドナウ川とは反対方向にある市民公園内にある。ここは緑豊かでブダペストっ子の憩いの地であること間違いない。日曜日とあってセ―チェーニ温泉に行く家族連れで車内は賑わっていた。温泉も魅力的だったけれど、これはまたの機会に(笑)


まずは世界遺産の英雄広場に面した西洋美術館を見学することに。ここは点数は少ないがエル・グレコのコレクションやボシュの『快楽の園』の中央パネル(ボシュの生徒によるもの、オリジナルはスペインのプラド美術館所蔵)などもある。古代ローマ・ギリシャやエジプト・コレクション、中世、ルネッサンスのヨーロッパ美術が展示されている。



















池畔のヴァイダフニャディ城周辺を散策してお昼ご飯はロビンソンに決める。ロケーションからして高そうだったが母のだし・・・。

わたしは鴨のグリル、次男はアンガスビーフ、とにかく野菜とフルーツベースのソースがお肉に合って美味しい。グンデルのデザートまでゆったりのんびり池畔で寛いで過ごす。








さあ、いよいよパラチンタの時間で~す!


お店に入ると少し待ってテーブルに案内され、わたしたちの席にはロジャー・ムーア氏の名札が立ててあった。ここは多くの著名人が訪れたらしい。

なんでも、数日前に来訪した習近平主席の歓迎ディナーのデザートもパラチンタだったのだそう。世界中でひっぱりだこのパラチンタ、お菓子には政治も人種も関係ない。そう、音楽だって国境はなく、すべてを超えてしまう。


今回は紅茶とともにいただいた。ビターチョコレートとクルミのソースが固く巻かれたクレープ生地にとろりーん、しっかり食べ応えのある量、美味しい以外のナニモノデモありません。楽団の演奏あり、ジャズの生演奏あり、とにかく賑やかで華々しいひとときだった。







グンデルで締めくくった後はホテルで荷物をピックアップして到着時と同じ経路で空港へ向かう。Wizzairは太陽フレアのせいなのか、2時間も遅延していてやきもきしたけれど、無事にローマへ戻ることができた。





2024年5月16日

ブダペスト『音楽とお菓子の旅』②

 


ブダペスト二日目は観光スポットに焦点を当てる。

コースは国会議事堂→セーチェ―二鎖橋→ブダ城→マーチャーシュ教会→漁夫の砦を徒歩で踏破の予定。

オクタゴン駅から地下鉄M1線、デアーク・フェレンス駅でM2線に乗り換え国会議事堂へ。広々とした敷地にドナウ川を背に堂々と聳え立つ議事堂は圧巻、ぜひ見学したいのでチケットオフィスへ向かうも夕方5時半まで完売とのこと。ブダ地区から引き返して見学することに。




ドナウ川沿いに鎖橋まで歩く。距離にして1kmほど、舗道には手摺は一切なく、すぐ下を川が流れている。落下することもあるのではないか。しばらく歩くとナチから逃れるために川に身を投げたユダヤ人の靴が並ぶモニュメントがあった。靴の中には小石が・・・これはユダヤの風習らしく花の代わりに小石を置くのだそう。サン・ポール・ド・ヴァンスのシャガールのお墓にも小石がたくさん置いてあったのを思い出す。




5月上旬というのに陽ざしは強く、夏はもうここにも。セ―チェーニ橋を歩いてブダ地区へ渡る。正面にはロープウェイがあるが長蛇の列。バスという手もあるが歩いて登ることにした。ブダ城はとにかく大きい。美術館として再利用しているようだったので、時間的にも内部の見学はあるかどうかわからないけれどまたの機会ということに。

お城の裏手のカフェでひと休みしてからマーチャーシュ聖堂へ。ゴシック様式のこの教会の最も目を惹いたのはカラフルな屋根瓦、あまり見たことのない組み合わせなのでこれもとても新鮮だった。内部もハンガリーの特色なのか独特な装飾が施されいる。

いっときはオスマン・トルコの支配によってモスクに変貌させられたこともあったのだとか。ブダ城も破壊→修復を繰り返してきたので、そう珍しいことではないのだろうけれど。




聖堂に隣接して漁夫の砦という要塞があったが立ち入る隙間もないほど大勢の観光客だったのでまたの機会に。









お昼は行き当たりばったりで。洗練されていそうなこのエリアは外れることはなさそうだった。入ったのはラマズーリという店。

またもグーラッシュをいただく(まるでグーラッシュの食べ比べ)

ここのはメンサとは別モノでスープというよりは肉煮込み。とろけるようなお肉は絶品だった。次男は鶏肉のグリル、ソースが凝っていて手作りのニョッキのような小粒のパスタがよく合う。

前菜はフォアグラのコニャック仕立てと鴨のパテ、生ハムとバター。このバターがなんとも美味しい!






そうこうしていると、昨夜この世とは思えない音色を奏でたテツラフ氏が奥方と出現!マネージャーに説明して写真を撮らせてもらえるか許可をもらい、パシャッ!これも天からの贈り物。



さてこれからがいよいよお菓子の時間。

候補に挙げていたのはいわずもがなのジェルボーとブダ地区からバスで丘を下り鎖橋のもうひとつ先の橋を渡ったところにあるパリジ・パサージュ。この辺りは落ち着いた旧市街とはひと味違う雰囲気、商業地区っぽい活気がある。

ここでは予約しておかなかったので門前払いを喰らう(ニューヨーク・カフェのような差別ではなさそうだったが)… アール・ヌーボー様式の造りにしばし酔いしれる。

ジェルボーはそこから歩いて数分のブダペスト中央広場にある。わたしは迷わずエステルハージ、次男はドボスケーキ。とうとう本家本元でいただけて感無量。お店は想像していたより広くて優雅な雰囲気で古くからあるこの国のお菓子の伝統を感じずにはいられない。

ちなみに、なぜ紅茶ではなくエスプレッソかというと、エスプレッソは日に3杯から5杯いただく習慣があり、旅先ではやはり足りない感があるからつい手が出てしまう。紅茶の方が合うような気もしたけれど19前世紀のブダペストではカフェの方が飲まれていたのではないかとも思ったりする。



ジェルボーを出て国会議事堂方面へは地下鉄で移動。ドナウ河畔で見学までの時間を遣り過ごすことにした。川面の表情が朝とは違ってさざ波に反射する光が美しい。






建築家シュテインドル・イムレによって1885年に着手、1904年に完成された世界で三番目(ヨーロッパ第二)に大きなブダペストの国会議事堂は、左右対称に造られたゴシック・リヴァイヴァル様式(ゴシック様式の復興運動)、見学が許されるのは右半分。左半分は国会議事堂として現役の機能を果たしている。



警備は厳重、オーディオ・ガイドは30か国語準備されていて、タッチパネルで言語を選ぶシステム(これは画期的!)ガイドについて96段の階段を昇り聖イシュトバーンの王冠が保管されている中央ドームへ。圧倒的な階段広間の装飾やステンドグラス、これらすべてを17年で完成させたというのは驚異的で1000人が従事、4000万個のレンガと50万個の宝石と40㎏の金が使われたということ。

ところで、この「96」という数字、カルパチア盆地征服定住896年とその千年祭1896年にちなんだものとされている。

一日中歩き疲れてホテルへ帰投、夕飯は新しい場所を開拓する元気もなく前夜と同じKet Szerecsen(読み方不明)というアカデミー近くのビストロに行く。軽い夕食と思っていたけれど、せっかくハンガリーに来たのだからハンガリー料理を、ということで量少なめに。豚肉の煮込みと山羊のチーズの丸ごとグリルのアップルソースetc、美味しい!

その夜もヨーロッパではあちこちでオーロラが見えたそうな。












2024年5月15日

ブダペスト『音楽とお菓子の旅』①

 

2016年9月にウィーンを旅したとき、ザッハトルテはデメルかザッハかという問題にぶち当たり、調べていたらそのルーツはもとはといえばブダペストだった!というわけでぜひともお菓子を食べに行きたいと思ってブダペストの旅を計画した。

そのいきさつについて詳しくはこちら 

→https://bibitaro.blogspot.com/2016/09/sentiamo-cio-che-mi-raccontano-i-piatti.html





ハンガリーの音楽家といえばリストが代表的。リスト・アカデミーではコンサートも開かれているので5月の公演を調べてみると、運よくクリスチャン・テツラフのバイオリン公演があった。その日程に合わせてホテルとエアチケットを予約することに。


ハンガリー航空(Wizzair)は初めて。EU圏内は週末の旅を楽しむにもローコストが便利で最適。

ホテルは地下鉄のオクトゴン駅からも徒歩2分、アカデミーも徒歩圏内という立地。


ブダペストの空港からはエアポートバス100Eで市内へアクセスし地下鉄に乗り換えて。ブダペストの公共交通機関は要所に案内人がいるのでわかりやすいし、乗車券も徐々にタップ&ゴー方式に変わっているようだ。ホテルまでの移動はスピーディーに効率よく運び、無事にチェックイン。お勧め両替所のコレクト・チェンジで現地通貨フォリントに両替し(ほとんどカードで済ませることができるのだが)ランチを予定していたニューヨーク・カフェへ向かう。

人気スポットのこのカフェの店頭には長蛇の列が並んでいた。15分ほど待って入店するも案内されたのは2階の壁の裏、テーブルも他とは違っていてアジア系の観光客コーナーだとすぐにわかった。かつて、パリやロンドンのカフェやパブでの人種差別待遇はよく聞いたけれど、それもずいぶん昔のこと。こうまであからさまな待遇がいまだにあるとは!というわけで早々に店を出てしまった。






コスパで評判のメンサという店で初めてのハンガリー料理、スープ仕立てのグーラッシュ(我が家のグーラッシュはオーストリア風に肉のパプリカ煮込み)に旅の疲れを癒される。






ハンガリー風前菜というのを試しに注文。パテとソーセージは大丈夫だったけれど、アヒルと豚の脂身のフライはとうとう食べられなかった。





次男が注文した豚肉のグリル。こちらも美味。







午後はコンサートが始まるまで街を散策することに。

聖イシュトヴァ―ン大聖堂は新古典主義のすっきりした建築様式。ローマの教会を見慣れている目にはどこか新鮮で現代的に映る。





夜は待望のテツラフのコンサート。早めに行ってリスト音楽院を見学する。アール・ヌーヴォーの建築様式は一風奇妙ですらあるけれど、当時は最先端の芸術作品だったに違いない。ウィキペディアによればニーチェの『悲劇の誕生』をコンセプトとし、デロス島のアポロン神殿を想定して造られているらしい。





演奏はブダペスト交響楽団、指揮はアンドラス・ケラー。

ワグナーのローレングリン前奏曲
ブラームスのバイオリン協奏曲ニ長調作品77
メンデルスゾーンの夏の夜の夢作品61

インターバルなしの演奏だった。すべての演奏が終了したすぐ後、階段を一気に昇りつめ昇華した状態で奏でられるアンコールは天からの贈り物とでも言いましょうか、その場でしか授かることのできない恩寵。キラキラと空からクリスタルの雫が降り注いで来た。外に出ると内陸の大草原から吹きつける乾いた風が肌寒く感じた。

その夜、ヨーロッパ中、いや世界中で、太陽フレアの影響でワインレッドのオーロラが見えたらしい。