2020年8月24日

母、86歳、イタリアへ移住する ① Mamma, 86 anni, si trasferisce in Italia, definitivamente!




2019年2月、兄が突然亡くなった。そして、兄と同居していた母がひとりぼっちになった。ローマにいたわたしは急遽帰国、それからというもの、お葬式、遺品整理、相続手続き、ぎっくり腰になった母の入院、介護施設探しと転居、家の処分、墓じまい・・・山積みの日々が続いた。

離れて暮らしていると、母はいつまでも以前のままのような気がして、ヘルパーさんに来てもらえばひとり暮らしも大丈夫だろうと思っていたら甘い甘い、なにからなにまで兄がお世話をしていたので、食事の準備からお金の管理まで、いつのまにかなにもできない母になっていた。 

幸い、お風呂や洗面、着替えなどの身の回りはなんとかなったけれど、記憶はときどき飛ぶし、足元が覚束ないこともある、一軒家でひとりで暮らすのは危険、etc... 一緒にいてはじめてわかることがたくさんあった。これだとどこかの施設に入ってもらうしかない・・・。

市の統括センターで介護保険手続きをお願いし、とりあえずのショートスティ先やその後の介護施設などだいたいの目処がついたところで、4月にはいったんローマに戻り、家の売却や相続手続きなどはメールでやり取りを続け、5月末には不動産屋に鍵を渡すというスピード展開。

友だちと計画していた6月後半からの還暦祝いクルーズ旅行もキャンセルすることなく無事に出発することができた。

11月には東京任務を終えて帰国が決まっていたわたしたちは、母をそのまま介護施設に残していくつもりだった。年に一度くらいようす見に帰ればいいだろうと・・・。

それが、ある日、一大転換が訪れる。

「実家の家じまい」をメンタルからフィジカルまで終始一貫支えてくれた高校のクラスメート(彼女とのご縁は小説が書けるほど!)が、「お母さんもイタリアに連れて行くしかないでしょう!」ときっぱり。夫に相談すると、すぐに領事館に問い合わせよう、と。

目から鱗だった。母をイタリアへ連れて行こうなどと1ミリも考えていなかったのはわたしだけだったのかも知れない。親戚に打ち明けると「それがいちばん!」という返事。

母の面倒を見てもらう親戚がなかったわけではないが、親切に後見人を名乗り出てくれた従兄も高齢、母の在所もそれぞれが高齢者を抱えている、よくよく考えてみれば、実の娘がいるのにそれで良いのか?いろいろな思いが巡った。

とりあえず、母のイタリア移住については、あくまで選択肢のひとつとして、出国までの母のようすを見ながら準備を進めることになった。

移民手続きの必要書類については、イタリア領事館もローマの移民局に問い合わせるようにとのこと。けれども、遠路はるばるテオフィロ・パティーニの移民局までいきなり行って情報がもらえるのかどうか、それも不明だった。最寄りの警察署の移民窓口に行ってみたが、正確な情報はなく、まったく埒があかない。

やはり、移民局に直接出向いて聞くしかないのかなあ。なんとかじぶんで調べることはできないものか?

移民に関する条令や移民専門法律事務所のサイトを徹底的に調べていたら、ようやく、イタリア人の家族を外国から呼び寄せる場合の手続きは比較的簡単だということがわかってきた。 

日本から準備していく書類は、母とわたしの関係性がわかるものということで外務省のアポスティーユ証明とイタリア語法定翻訳つきの戸籍謄本、医師の健康診断書、有効なパスポートくらい。とりあえず観光ビザで入国して移民局へ出頭する段取りでいけそうだった。

出国の11月まで、母には安全な施設にいてもらうことにして、移住についても、追々説明するつもりだった。めまぐるしい生活を強いられてきた母の心情を慮れば、すぐに言い出せることではなかった。

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